被告が産機興業の倒産当時産機興業に対して有する売掛代金債権等の合計 額が5600万円余と多額であり,これを放棄すれば他の債権者に与える影 響は大きいし,在庫商品等を比較的低額で譲渡したことを正当化する大きな 論拠となり得るから,かかる提案があったとすれば,配当が主たる関心であ った少なくとも第2回の債権者集会で,上記提案につき何らかの言及があっ たはずである。
しかし,第1回債権者集会はもちろん,第2回債権者集会に おいても,上記提案につき何らの言及もないから,被告の担当者において上 記提案をした事実は証拠上認めることができないというべきである。
(5) 在庫商品譲渡の対価について
本件全証拠によっても,被告のF等の担当者において,原告ないし産機興 業の担当者に対し,産機興業の在庫商品を評価の上,適正な価額で買い取る ことを本件商標権の譲渡の条件として申し出た事実を認めるに足りない。
そして,本件商標権の譲渡と産機興業の在庫商品の譲渡とは,もともと権 利者も契約当事者も異なる,別個の契約なのであって,仮に後者の譲渡の対 価の設定が結果的に適正ではなかったとしても,そのことの一事をもって直 ちに前者の譲渡において欺罔行為がされたことにはならない。
なお,仮にかかる申し出がされたとしても,それは当然の事柄にすぎない 上,目的物の譲渡価格の設定は,譲渡当事者間において本来自由に決定でき る事柄であるところ,産機興業が当時倒産しており,不良在庫を抱えていた ことにかんがみると,産機興業から被告に譲渡された在庫商品等の価格が適 正ではなかったことを認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。
(6) 小括
以上のとおり,本件譲渡契約について被告の担当者による欺罔行為を認め るに足りる証拠はなく,本件譲渡契約に係る原告の意思表示は被告の詐欺に よるものとはいえない。
4 結論
以上の次第で,原告の請求には理由がないから,原告の本件請求を棄却する こととして,主文のとおり判決する。

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