釧路司法書士会
また,同1(8)認定のとおり,「商標権譲渡に関する覚書」では,本件
商標権の譲渡の趣旨として,産機興業の従業員の雇用及び協力会社の営業
の確保に資することが明記されている一方(6項),産機興業の元従業員
のうち事業規模程度の人員が被告の設立する新会社に雇用されるよう被告
において配慮する義務が定められているのみで(3項),新会社が雇用す
る元従業員の人数は明記されていないし,採用される人員の規模も新会社
の事業規模に必要な限度に止まっているものである。
そして,同1(1)認定のとおり,そもそも産機興業は新たな事業である
焼却炉残さタイル化プラント等の環境事業の展開に失敗して倒産するに至
ったものであるところ,同1(4)認定のとおり,EらはCらとの間で,産
機興業の営業のうち,焼却炉残さタイル化プラント等の環境事業は新会社
において産機興業から引き継がない旨を合意し,他方,同1(6)認定のと
おり,Cにおいて新会社では産機興業より少ない人数で営業活動を行う旨
発言しているから,被告が設立する新会社の営業の規模は,被告が新会社
設立の提案をした当初から産機興業の営業の規模よりも相当程度小さくな
ることが予定され,したがって,新会社に必要な従業員の数も相当程度減
員されることが当初から予定されていたものである。
なお,被告が設立し
た新会社株式会社カクタスにおいて産機興業の元従業員から採用した従業
員は,19名と産機興業の元従業員全体の約44パーセントに当たり,産
機興業の元従業員全体の人数(43名)からは相当程度減少しているもの
の,決して少なくはない。
そうすると,本件譲渡契約の時点では,被告において採用する産機興業
の元従業員の人数は未だ確定しておらず,E等の被告の担当者が産機興業
側に提案したのは,新会社の営業(事業規模)に必要な,相当程度の人数
として,少なくとも19名程度を元従業員から採用するというものであっ
たと認められ,採用の条件として産機興業と同一の就業条件にすることや,
営業所の人員をすべて引き継ぐこと等が提案された事実はなかったという
べきである。
(3) 営業所の引継ぎについて
前記1(6)認定のとおり,被告の当時の常務取締役であったEらが産機興
業のCらと平成13年7月30日の時点で協議していたのは,産機興業の営
業所のうち,東京の本店と大阪,名古屋及び九州の営業所並びにテクニカル
センターを,被告の設立する新会社において引き継ぐことであって,その後
に札幌の営業所が引き継ぐべき営業所に加えられたものであった。
しかし,
本件全証拠によっても,新会社が産機興業の全営業所を引き継ぐことや引継
ぎの対象から除外されている仙台の営業所の引継ぎの件について,産機興業
の担当者と被告の担当者との間で協議がされた事実は認められず,被告の担
当者において産機興業の担当者に対し,新会社が産機興業の全営業所を引き
継ぐ旨の提案をした事実は認められない。
(4) 売掛金債権の放棄について
被告の担当者において産機興業の担当者に対し産機興業に対する売掛金債
権を全額放棄するとの提案をしたという事実については,本件全証拠によっ
ても認めるに足りない。