仮にこの部分に従えば,平成13年7月下旬ころでは産
機興業の従業員の引受け等の件につき被告側と合意の条件が全然確定して
いなかったことになるが,その後直ちに産機興業の全従業員の約3分の2
を採用すること等が決まるのは,極めて不自然というべきである。
そうすると,当時においていかにB税理士が産機興業の任意整理を取り
仕切っていたとしても,本件商標権の譲渡の話が浮上するまでCがほとん
ど任意整理の進行に関わっていなかったというのは不自然であって,Cの
上記各陳述書(甲11,14)中の原告主張に沿った部分は信用できない。
ウなお,前記1(15)イ認定のとおり,原告は第2回債権者集会において,
被告が産機興業の元従業員の3分の2程度を新会社で採用すると申し出て
くれたから本件商標権を無償で譲渡した旨発言しているが(なお,原告の
陳述書(甲16〔16,17頁〕)中には,第2回債権者集会議事録(乙
5)はB税理士が自分に累が及ばないように勝手に書いたものであって,
原告は同議事録中にあるような発言をしていない旨の部分があるが,同議
事録は詳細かつ具体的な内容のものであって,原告の発言部分の前後の流
れも自然なものであるから,上記原告陳述書の該当部分は信用できな
い。),この時点は被告が新会社を設立してから約5か月も後のことであ
って,このころには新会社が採用する産機興業の元従業員の人数も概ね確
定していたと推認できるところ,前記1(4)及び(6)認定のとおり,既に6
か月以上前の平成14年7月30日の時点で被告が設立する新会社の営業
規模が産機興業の営業規模よりも相当程度小さくなることが予定されてお
り,新会社が雇用する産機興業の元従業員の人数も19名程度になること
が被告の関係者とCらとの間で協議されていたものであったから,上記第
2回債権者集会の当時には,新会社において雇用する産機興業の元従業員
の人数が産機興業の従業員全体の3分の2程度にならないことは,既に明
らかになっていたと推認できる。
そして,上記第2回債権者集会の当時,
原告が被告に対し,本件譲渡契約につき異議を述べたり,その効力を争っ
たり,又は契約解除をした事実は本件全証拠によっても認められない。
そ
うすると,原告のかかる発言は原告の誤解に基づくものであったといわざ
るを得ず,他にE等の被告の担当者において,原告ないし産機興業の担当
者に対し,産機興業の元従業員の約3分の2を採用する旨の発言をした事
実を認めるに足りる証拠はない。
エなお,前記1(4),(6),(7)ないし(12)認定のとおり,産機興業では倒
産直後から従業員の雇用確保,未払賃金等の支払及び協力会社(下請会
社)の営業継続が実現できるよう,D及びCにおいて種々奔走し,その結
果,被告の当時の常務取締役であったEらとの間で,被告が新会社を設立
して従業員を引き受ける計画につき協議するに至ったものであるが,被告
がかかる計画を立案するに至ったのは,同1(4)認定のとおり,被告の特
約店であり,かつ一部の商品については総発売元であった産機興業が既に
開拓していた販路を確保し,産機興業の倒産により自己の商品の販売に支
障が生じることを回避することが第1の目的であったものであるし,また
同1(6)認定のとおり,EとCとの間で平成13年7月30日に行われた
打合せでは,被告が設立する新会社が産機興業から引き継ぐ営業所はその
一部であり,かつ産機興業の元従業員から採用するのは19名程度に止ま
ることが協議されていたものである。